断熱材はグラスウールより現場発泡ウレタンがおすすめ?
新築住宅を建てるときには、冷暖房費を抑え、快適な生活を送るために断熱材の選択が重要なポイントとなります。
この記事では、現在多くの住宅で採用されている二つの断熱材、グラスウールと現場発泡ウレタンについて比較し、どちらが推奨されるかを説明します。
まず最初に、グラスウールと現場発泡ウレタンの特性から説明します。
グラスウールはガラスを原料とした断熱材です。ガラス繊維を綿状に加工したもので、布団のようにガラス繊維内の空気を動かさないようにすることで、断熱性能を発揮します。
そのため、断熱材のなかで空気が対流したり、断熱材が入っていない箇所があると、計算上の断熱性能よりも大きく性能が落ちることになります。
なので、グラスウール断熱は施工精度が極めて重要で、施工技術が不十分な住宅会社に任せると、住宅の断熱性能が大きく損なわれます。
一方、現場発泡ウレタンは、2液からなるウレタンの原液をスプレーで吹き付け、その場で化学反応が始まって膨らんでいく(発泡する)ことで断熱施工が行われます。
また、現場発泡ウレタンの断熱工事は専門の施工業者によって行われることが多く、施工技術についてはそこまで心配をしなくても問題ないでしょう。
このような観点から見ると、現場発泡ウレタンの方が安心と感じるかもしれません。
さらに、断熱材の性能としても現場発泡ウレタンは、グラスウールと同等かそれ以上のため、同じ厚みで断熱材を施工した場合は、現場発泡ウレタンのほうが高断熱の住宅にすることができます。
そのため、住宅会社が採用する断熱材の種類では、現場発泡ウレタンが大きくシェアを伸ばしている状況にあります。
しかし、現場発泡ウレタンには注意点がいくつかあります。
一つ目は、ウレタンの発泡には最適な温湿度が決まっているということです。
工場で生産されたウレタンパネルであれば品質が安定していますが、現場で吹き付ける場合、その現場の温度や湿度によっては発泡不良が発生する可能性があります。
そのため、施工の精度というより、施工する際の季節や天候により性能を左右される場合があるという点が、現場発泡ウレタンの特徴になります。
二つ目は、ウレタン内部の発泡ガスが抜けることで性能が劣化する可能性があるということです。
これは発泡剤などの種類によるため、製品によって変わりますが、商品カタログの性能値から25%も断熱性能が低下するものもあります。
しかし、ウレタン内部に炭酸ガスではなく、空気が充填されているものであれば、室内の空気と入れ替わっても性能の劣化が起こることはありません。
また、ガスが入れ替わることによる性能劣化も、空気の断熱性能より性能が下がることはないため、一定の性能値で下げ止まると考えられます。
三つ目は、現場発泡ウレタンの断熱施工では、壁内結露対策が取られていない場合があることです。
現場発泡ウレタンの断熱材には、独立気泡と連続気泡という二つの種類がありますが、連続気泡では湿気がウレタン内部まで入ってしまう危険性があり、メーカーの施工マニュアルにも防湿層を設ける必要があると明記されています。
しかし、結露計算によって安全性が確認されている場合は、防湿施工を省いてもいいという但し書きがあるためか、多くの施工現場では防湿層が設置されていないようです。
そのため、現場発泡ウレタンで断熱施工を行っている住宅会社に依頼する際は、防湿層の施工か結露計算を行っていることを確認する必要があるでしょう。
四つ目は、現場発泡ウレタンを施工した住宅は、解体する際の費用が高額になるということです。
現場発泡ウレタンは、自己接着性といって吹き付けた木材などにしっかりと接着します。
そのため、断熱材を施工するだけで住宅の気密が取れることから、気密層を設けて隙間のないように気密施工を行わなくても、ある程度までは住宅を高気密化することができます。
しかし、一旦木材に吹き付けたウレタンを取り除くことは非常に難しく、住宅を解体する際には、通常の木材と比べて廃棄処分費が高額になると予想されます。
五つ目は、ウレタン断熱材は製造時の環境負荷が大きい点です。
グラスウールはその製造原料として窓ガラスなどのリサイクル品を使用している一方で、ウレタンは石油製品から作られます。
そのため、製造時のCO2排出量で比べると、ウレタン断熱材はグラスウールの何十倍ものCO2を出します。
製造時の環境負荷という観点から考えると、ウレタン断熱材は優れているとは言えません。
このように、現場発泡ウレタン断熱材には気を付けるべき点がありますが、専門の施工業者が施工するため、どの住宅会社でもある程度の性能を確保できます。
高気密高断熱住宅に不慣れな会社や、施工技術のレベルが高くない会社に依頼する場合には、現場発泡ウレタン断熱を選ぶのもいいかもしれません。
ただし、その場合は上記の注意点をしっかりと理解したうえで、間違いのない商品選定や防湿処理を求めるようにしましょう。
一方で、現場の施工技術に自信がある会社ではグラスウール断熱をおすすめしていて、現場発泡ウレタンを施工していないケースもあります。
一般的に、グラスウールはコストパフォーマンスに優れるため、依頼先の標準断熱材がグラウスールで施工技術に問題がなさそうだと判断できれば、グラスウールを選択するのがいいでしょう。
断熱材の情報を調べていると、どの断熱材を選べば良いか悩んでしまう方も多いと思います。
しかし、どの断熱材を選んでも、施工が適切であれば十分に断熱性能を発揮します。
逆に言えば、どんなに素晴らしい断熱材でも、住宅会社が施工に不慣れであれば性能を発揮させることは難しいでしょう。
また、断熱材は特別な事情がない限り、交換やリフォームを想定していない建材です。
したがって、新築時に施工不良がある場合、その影響は長期間にわたって続くことになります。
これらを考慮すると、断熱材は自分で選ぶよりも、依頼先の住宅会社が採用する断熱材を基本的には信頼しつつ、そのメリットとデメリットを確認するという方法がおすすめです。
どの断熱材を選ぶにしても、正しい知識を持った住宅会社に依頼することが一番大切です。
適切な知識と理解を持った住宅会社を選ぶことで、あなたの住まいが快適で省エネな住宅になることを願っています。